本日ついにフランクのCD発売開始♪

最終更新: 2023年3月11日

すっかり春の陽気ですね。

本日ついにセザール・フランク「大オルガンのための12の作品」が一般発売となります

発売元のコジマ録音 さんのページからもご購入いただけますし、

アマゾン、HMV、タワレコ、楽天など各種インターネットショッピングサイトからもポチッとご購入いただけます。どうか皆様、ご家族ご友人など、ご周知いただきますようお願いいたします🙇‍♀️

2月の演奏会先行販売ではすでにかなりの方にご購入いただき、たくさんの嬉しいお声を頂戴しています。本当にありがとうございます!!

そしてなんと、ONTOMO Webマガジンで、音楽ジャーナリスト・評論家林田直樹さんの「林田直樹の今月のCDベスト3選」に取り上げていただきました👏 是非ご覧ください!

「こういうCDが出るのを待っていたような気がする」

https://ontomo-mag.com/article/column/hayashida-cd-2023-03/

日本の音楽界においては、オルガンやフランク、ましてや私なんて地味の極みですし、

正直この主要作品全集がどのように聴いていただけるのか不安がありました。

ですので、音友のような全ジャンル勢揃いのマガジンで選んでいただけたことは本当に嬉しいことです!

今は動画も映画もなんでも飛ばしてみたり、タイムパフォーマンスの良いもの、再生数の多い&映えあるものしか残らない傾向にあるのでなおさら心配でした。求めていたのは全く正反対のものだったからです。

膨大な準備を経て精魂を込めて演奏し、出来てきた音を聴いたとき、やはりフランクの音楽が語る言葉の美しさがくっきりと浮かんできて、全てが昇華された気がしました。

フランスの製作側はもちろん、販売元のコジマ録音の方も「フランクの求めた真摯な芸術が希求するもの、その大切さに気づき、聴いてみつけてほしいですね」と言ってくださったのが印象的で、こんなふうに伝わるのかと涙ものでした。

今回発売にあたって、なぜこのCD制作に至ったのか、ここに書いておこうと思います。

(少し長くなりますが😊、ぜひ最後までお読みください!)


オルガンを始めた頃から、なぜかフランクの音楽はずっと大切な存在でした。

だから、その演奏に適したカヴァイエ=コルの楽器が多くあるフランスに留学したのです。

大学3年生の時にスペイン、サン・セバスティアンでの講習会で、有名なサンタ・マリア大聖堂のカヴァイエ=コルに触れ、フランクのコラール第2番を弾きました。

透明感のあるフルート、基音を重ねた時の柔らさや包容力、時に爆発的な力強さを持つ奥深さに恋に落ちたといっても過言ではありません。

それまでも大学1年の時にバッハゆかりの地を巡るドイツの旅に出て、日本の楽器との圧倒的な違い、素晴らしさにカルチャーショックを受けていた私ですが、このカヴァイエ=コルとの出会いはまた少し違いました。

一言で言うと、好きな音色だったのです。

芳醇な赤ワインのような響き、口の中に入れた瞬間の広がり、鼻に抜けた時の豊かな香り、チーズや食事と一緒になった時の混ざり合い(これを一般的にマリアージュと言います)。

これがフランクの音楽とカヴァイエ=コルの楽器との出会いなのです。

フランクの作品を最良の形で聴くには、フランク自身が想定した楽器の響きを活かせる場でないと不可能に近く、日本ではいつもその叶わない思いを持っていました。

日本でももちろん演奏できますが、フランクの演奏に100%適した楽器はないので、いつかその真価をちゃんと伝えたいと願いが強くなったのです。

そこでやってきたのが、2022年のフランク生誕200年と2019年からのコロナ禍です。

生誕200年を記念して、主要なオルガン作品12曲を全て録音しよう!

しかも、録音するならフランスの大好きなあそこのカヴァイエ=コルで!

コロナ禍で考える時間が増え、依頼された仕事とは別に、自分が本当にやりたいことを見つめ直す時間を持つことができました。

それが、留学時代に高貴な音色に胸を打たれたサン・トメール大聖堂の楽器でのフランク主要全12作品録音へと繋がりました。

幸いなことに、その思いを支えてくれるフランス人の友人がおり、その支えのもと、2週間の滞在中に全12曲約170分の録音を行うことができました。録音自体は全部で8夜、そのための音色の準備、アシスタントとの合わせなど含めると、ミラクル。

これは自分で言うのもなんですが・・・尋常ではありません笑

このサン・トメール大聖堂の楽器は、彫刻の美しい1715年のオルガンケースを再利用し、1855年にカヴァイエ=コルによって再構築されたものです。カヴァイエ=コルの初期の頃の傑作と言っても良いでしょう。

フランクがパリのサント・クロティルド教会のオルガニストに就任したのは、1959年にカヴァイエ=コルによる新オルガンが導入された頃ですので、ほぼ同時代の楽器です。

サント・クロティルド教会は1857年に新しく創立された教会で、カヴァイエ=コルが1からその会堂の響きにあった楽器を導入しました。当時から、ロマンティックな整音のオーケストラ的な響きを理想にした世にも美しい響き、と評判の楽器です。

フランクは、自分の教会の楽器や次々と導入されていくカヴァイエ=コルの楽器にインスピレーションを受け、その時代に欠けていたドイツの書法、フランスの歌と和声的要素を兼ね合わせた精神性の高い作品を生み出すのです。

しかし晩年、ようやくその真価が認められた矢先、オルガンのための3つのコラールを残し、この世を去ります。

カヴァイエ=コルの楽器は年代ごとに変化が見られます。初期は古典的要素を残しながらロマン派的アプローチを推進し、中期になるとロマンティックな整音をされたパイプ達がオーケストラ的な響きを織り成し、後期になるとさらに交響的な要素が増して、強弱をつけられるレシ鍵盤のストップが充実していきます。

現在、サント・クロティルド教会の楽器は改修が重ねられ、残念ながらフランクが生きた当時の響きを僅かに感じられる程度になってしまいました。

一方で今回の録音楽器、サン・トメールの初期の美しいカヴァイエ・コルの歴史的楽器は、ほぼ当時の状態に修復されています。その特徴的な響きである、高貴で慎ましいリード管、決してアグレッシブになりすぎない基音の重なり、Tuttiの爆発的なエネルギーなど、フランクが生きた時代の音を聴いていただけるのです。

歴史的楽器で弾くということは、語り尽くせない学びと喜びがあります。


ただただ、フランクが表現したかった音楽の美しさ、喜びが伝われば。

美しい楽器とそれに合う作品、そして然るべき演奏技術が全て溶け合った時、時空が揺らぐような魔法がかかると信じています。

全ての情熱、これまでの音楽人生、人間関係を懸けて紡いだCDです。

どうぞ皆様、ぜひCD本体をお手にとっていただけましたら幸いです。

制作にあたり、

同じように妥協なく情熱を注いでくれた大切な友人、エンジニアや音楽ディレクター、

アシスタントのみんな、ブックレット制作時にお力添えをくださった皆さま、

素晴らしいCDを作成してくださったコジマ録音の皆さま、

何度か絶望した時にたくさん励ましてくれた家族や友人たちに

心から感謝を。

Ami Hoyano

次回はメイキング動画をお楽しみに♪

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